2023/10/16解決事例
(解決事例)破産・同時廃止
N総合法律事務所、弁護士の首藤です。
ひとつ事件が終了しましたので、依頼者の許可を得てこちらへ解決事例として記載いたします。
今回の事件は破産であり、結果として、同時廃止手続で免責許可を得ることができました。もっとも、それに至るまでにひと悶着ありました。
あくまでも一般的な傾向ですが、一度、任意整理を行った後に方針を変更して破産を行うことになると管財手続(破産管財人がつく手続)になることが多いです。
というのも、任意整理手続では、債権者のうちいくつかを任意に選択して分割交渉を行い、決めた内容に従い債権者へ返済していくのですが、依頼する債権者としない債権者が分かれてしまうと破産との関係ではその行為が偏頗弁済(へんぱべんさい)にあたってしまうことがあるからです。偏頗弁済とは、支払ができない状況になっているにもかかわらず、特定の債権者にだけ優遇して返済を続けることです。すべての債権者について任意整理を依頼した後、新たな債権者から借り入れをしてその債権者へ返済していない場合もこれにあたると考えられます。
依頼者は、大手の債務整理事務所へかつて任意整理を依頼しており、返済がうまくいかなくなってしまったため弊所へ破産を依頼されたという経緯があります。この点が一つ目の問題点でした。
また、依頼者は、収入が安定せず、生活保護を受給する予定がありました。そのため、一つ目の問題点から破産管財人がつくと引継予納金として最低20万円を破産管財人へ支払わなければならなくなるため、20万円の捻出は到底できない以上、何としてでも同時廃止にする必要がありました。これに対して、生活保護をすでに受給している人が破産する場合、同時廃止手続になることが一般的ですが、今回は生活保護受給前であるため、当然には同時廃止にならないという状況でした。これが二つ目の問題点でした。
裁判官と面接でいろいろお話させていただいたのですが、やはり当初は管財事件として処理すると明確に言われてしまいました。しかし、依頼者の置かれている状況やプラスアルファの説明をすることにより、裁判所の破産部の裁判官たちに協議をしていただけることになり、最終的には同時廃止手続で処理するとの結論を出していただきました。その後は滞りなく手続が終わり、破産ができました。
今回の事件でお伝えしたいことは、やはり、無理に任意整理をしようとすると、破産に方針変更しようとしたときに予納金の支払いなど、事実上ペナルティを受けてしまうということです。今回は、なんとか同時廃止になり、破産管財人がつくことを免れましたが、もしついていれば、申立てとほぼ同時に予納金を一括または分割で納めなければならなくなるところでした。
やはり、最良の債務整理手段は何かを弁護士に依頼する際にできる限りしっかり検討するべきです。