解決事例

2024/06/09解決事例

(解決事例)破産・同時廃止

 N総合法律事務所、弁護士の首藤です。更新に間が空いてしまいましたが、先日終了した事件についてご依頼者様の許可をいただきましたので、解決事例として掲載いたします。

 今回は、東京地裁で同時廃止になった事件についてです。

 ご依頼者様は、生活のために多数の借入れをしていました。元々、結婚をしていましたが、配偶者の収入や家庭に入れる生活費が少なく、借り入れをすることにより生活を補填していた状況でした。問題が一つあり、それは、その配偶者とは別居状態で、なおかつ離婚には至っていないという状況にあったことです。離婚する前であっても、他方の生活費、子の生活費を収入が多い方は基本的に支払う必要があります。これを「婚姻費用」といいます。これに対し、離婚後に、子の生活費として支払わなければならないのがよく聞く「養育費」です。何が問題かというと、破産者は、債権者に対して、自己の財産を処分して配当する必要がありますが、この未払いの婚姻費用について、回収可能性があるのではないかということが即日面接の際に問題になりました。つまり、他方配偶者に対して、婚姻費用の請求権という、回収ができれば債権者に配当できる可能性のある財産があるのではないかということが問題にされたのです。可能性があるとは考えていたのですが、ここまで正面から追及されるのかと少し気持ちが落ち込みました。

 実際問題として、他方配偶者は、婚姻費用を支払う意思も能力もなかったのですが、調停不成立に終わったことを証する書面もいろいろな都合により残念ながら入手できず、婚姻費用の支払い請求権が現実的に回収可能性がないことを証明する資料はありませんでした。また、東京地裁は、同時廃止事件ではなく管財事件にされると20万円の予納金を支払わなければならなくなります。ご依頼者様には子がいて、進学を控え、どうしても今すぐまとまった費用が必要な状況にありました。分割払いであっても、20万円の予納金を支払う事態になることは何としてでも回避しなければならなかったのです。

 あとは裁判官との話し合いをするだけでした。どうしても予納金が捻出できないこと、婚姻費用の回収可能性がほぼないことを説明しました。詳細は省きますが、何とか同時廃止事件で処理すると裁判官に納得していただけました。この事件は、ご依頼者様とその子の将来がかかっていたため、ひりつくような緊張感が常に私を襲い、精神的にもかなり消耗しました。しかしながら、なんとかやり遂げられたことから、今となっては貴重な経験をさせていただいたことを感謝しています。次の解決事例でも同時廃止事件となった事例を記載する予定ですが、東京地裁と他県の裁判所の温度差が伝わる内容になるかもしれません。

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