解決事例

2023/05/14解決事例

(解決事例)破産・管財(住宅ローン債務)

先日、免責許可が出た事例について、あまり経験したことのない内容であったため掲載します。掲載につき、依頼者の了承を得ています。

この事例の特殊な点は、弁護士以外の他士業者が絡んでいたところです。

依頼者は、最初、他士業者へ任意整理を依頼しました。その任意整理は、住宅ローンの支払いをするために消費者金融や信販会社の債務を整理するというものでした。これについては、何ら支障なく整理ができたようです。

その後、依頼者は、結局住宅ローンを支払うことができず、住宅を任意売却することになりました。そこにも同一の他士業者が関与し、不動産の任意売却の立ち会いをしていたことが資料からわかりました。

問題はここからで、住宅ローンはオーバーローンの状態(住宅ローン債務額よりも売却価格の方が低い)であったため、住宅ローン債務は残ってしまいました。その額は、約500万円でした。ところが、住宅ローン債務が残っていることについて、破産などの手続きが進められず(この事例の場合、他士業者はそもそも破産を取り扱うことができません)、他士業者が破産の書類作成代行の依頼を受けたまま、辞任せずに10年近くその債務が放置されてしまいました。

依頼者は、すでに債務整理が終わったと思っていたにも関わらず、売却から10年が経とうとした時点で裁判所から訴状が届きました。訴状には、約1500万円払えと書いてありました。住宅ローン債務の時効は10年であり、消費者金融や信販会社などの債務とは時効期間が違います。

問題はそれだけではありませんでした。依頼者は、住宅ローンを組むときに、2社から貸付を受けていて、任意売却の売却代金の大半は、訴訟を起こしてきた住宅ローン債権者に対して支払われ、もう1社にはほとんど支払われていませんでした。そのもう1社に照会をかけたところ、驚いたことに住宅ローン債務は2400万円にまで膨れ上がっていました。つまり、遅延損害金が積もり積もって、合計4000万円近い債務が依頼者にはあったのです。

到底依頼者が返せる額ではありませんでしたので、とにかく急いで破産の申し立てをしました。裁判所は、他士業者に対して損害賠償請求できるかどうか破産管財人に検討してもらわなければならないという見解を述べ、管財事件になりました。

訴訟を起こしてきた住宅ローン債権者と何度もやり取りをし、他士業者がこれまでどのような対応をしてきたのか詳細に事情聴取をしました。債権者は怒りをあらわにし、私に対し、他士業者に損害賠償責任が認められなければおかしい!とその心情をぶつけてきました。これまでに住宅ローン債権者の担当者が何度も他士業者の事務所を訪問しても、不在として対応しないなどの問題行動がいくつもあったようです。

結局、他士業者への損害賠償責任は認められませんでしたが、私自身は納得していません。免責が得られたからよかったものの、免責不許可になっていたら一体依頼者はどうなっていたのでしょうか。

債務整理については、本来、弁護士の職域に属するもので、例外的に一部の権限が他士業に与えられているにすぎません。先日も、相談予定であった方が、「債務額が少額であるため(全く少額ではありません。)、他士業の職域である」と他士業者に伝えられ、相談をキャンセルするという出来事がありました。何故そのようなことを平気で相談者に言えるのか、理解に苦しみます。

今回の事件は自身への戒めにもなりました。依頼者に損害を与えるような弁護活動をしないよう常に心がけていきます。

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