2026/03/10解決事例
(解決事例)破産・同時廃止(2ケ月分家賃を滞納していたケース)
N総合法律事務所、弁護士の首藤です。
今回も事例の掲載につき、許可をいただいていますので掲載いたします。
ご依頼者様は、家賃を2か月分滞納している状態で破産の依頼をされました。今回、問題となったのは、偏頗弁済です。これまで何度も解決事例で触れてきましたが、破産するにあたっては、特定の債権者だけに返済をすることは許されていません。債権者平等の原則が破産手続にはあり、債権者は、他の債権者よりも優先して返済を受けることはできず、あくまでも破産管財人の管理の下、債権額に応じた配当を受けられるに過ぎない地位になります。そのため、債務者と債権者の主観、返済金額や回数、期間などにもよりますが、偏頗弁済であるとされた場合、破産管財人が就任して、弁済を受けた債権者に返還請求を行うことがあり得ます。
今回は家賃です。すでに2か月滞納している状態でした。また、家賃月額は十数万円です。本来、保証会社が未納家賃を家主に支払い、保証会社が債権者に変わることが多く、また、3か月滞納すると解除原因である信頼関係破壊が認められることになるので、明け渡し訴訟を提起してくることが多いです。このような場合、親戚などの第三者に返済してもらうことや止むを得ない理由での返済として、家賃滞納を解消してから破産申立てするべきという指南がインターネット上の法律事務所のウェブサイトでなされていたりします。私もその対応ができないかとご依頼者様に確認しましたが、難しいとのことでした。
そうすると、生活の本拠を失うことになるので、偏頗弁済になりうることはわかっていても家賃を支払い続けるしかなくなります。滞納分と今後の未納分(毎月分)とに分けて、未納分について返済をすれば、毎月の本来の家賃の支払いになるので、弁済充当の指定をすることで偏頗弁済の可能性を回避しようとしました。ところが、話し合いをしても保証会社と家賃収納業者が同じで、交渉担当者が滞納分に毎月の支払いは充当すると言ってきかないので、やむなく継続的な偏頗状態で申し立てることにしました。もちろん事情については裁判所に上申書という形で家賃支払いの実情を報告しました。
裁判所は、この状況に理解を示してくれたのか、偏頗弁済を問題とせず、同時廃止として扱いました。また、免責審尋についても省略という形で、ご依頼者様が裁判所に行くことなく免責を受けることができました。
今後の賃貸物件の賃貸借契約がどのようになるのかは私もわかりません。解除原因となる3か月分の賃料滞納はないけれども、滞納分2か月分については免責されているといういびつな状態になっているからです。破産手続き終了後にご依頼者様が任意に滞納家賃を支払うのか、それともそのまま居住するのか、私自身の依頼内容(破産すること)は終わってしまいましたので、その点が気になります。
今回は、滞納家賃があり、偏頗弁済に該当しうるような返済を継続していても、ライフラインの支払いという特殊性から、同時廃止となったケースのご紹介でした。なお、これが家賃ではない場合、すなわち、クレジットカード会社や消費者金融、友人や知人への継続的な返済であった場合には、破産管財人が就きますし、悪質だとされれば偏頗弁済として免責不許可にもなりえますので、あくまでも特殊な場合とお考え下さい。


