2024/12/21解決事例
(解決事例)任意整理(破産からの転換)
N総合法律事務所、弁護士の首藤です。
11月から12月にかけては、複数の事件が同時に終了したため、まとめてになりますが連続して解決事例を掲載いたします。ご依頼者様の了承は得ております。
ご依頼者様は当初、破産を希望されてご来所されました。この方針は、ご親族の方々の意向があったのと、また、債務額が約1500万円もあったため、ご依頼者様の返済能力も踏まえると再生を選択するよりも妥当な手段選択でした。私もこれに賛同して破産の依頼を受けました。
この事件はとても悲しく、夫婦の一方が自死され、多額の借金を残して亡くなられたこと、また、ご存命の配偶者にも決して少なくない借金があったこと、また、ご存命の配偶者が亡くなられた配偶者の借金を相続せざるを得ないという状況にありました。
ご存命の配偶者は憔悴され、今後も仕事を継続して安定して収入を得ることなど到底できない精神状態にありました。親族の支えや同行がなければ、私のところへ相談しに来ることもできなかったと思います。私もなんとかしなければならないと思い、早急に破産申立て書類の作成に入りました。
破産の書類がある程度出来上がった段階で、亡くなられた方の死亡退職金などが配偶者の口座に入金されました。ここで大きな問題が生じました。それは、相談の際にお聞きしていた一時金、見舞金、死亡退職金などが想定していた金額よりも多く、ギリギリ返済ができてしまうほどの額だったのです。しかし、ここから返済交渉を行い、長期間ご依頼者様を不安定な状況に置くより、破産手続きに乗せてしまった方がよいと判断したので、ご依頼者様の了承の下、破産申立てしました。
申立て後、事件番号が振られ、破産手続きに乗ったかと思いましたが、裁判官から電話があり、債務総額と資産状況を対比すると返済は可能であり、支払不能(借金が資産を上回る状態)の要件を満たさないため、申立てを取り下げるようにと言われてしまいました。破産管財人が就任し、管財人報酬が資産から支払われることから、その分を差し引けば支払不能になるだろうと説明をするなどしましたが、申立て時の資産を判断基準として取下げを促す裁判官の姿勢は変わりませんでした。
破産はあきらめ、ご依頼者様、ご親族の了承の下、返済交渉(任意整理)に方針転換をしました。債権者数は15社+αでした。私も腹をくくり、ここからひたすら各債権者と交渉を繰り返しました。破産申立ての際にも把握していましたが、幸いなことに、債権者のうち1社には過払い金があり、140万円程度の借金がゼロになり、それだけではなく30万円が戻ってくるということもありました。最終的には約1100万円程度の返済をすることで各債権者と合意し、それぞれに一括返済をしていきました。ご依頼者様の手元には400万円程度が残り、しばらく仕事ができない状況でも何とか生活ができる資産状況にまで回復させることができました。これが1500万円の全額返済になっていた場合やそのまま破産手続きが進んでいった場合、当面の間、収入を得ることができない状況にあったご依頼者様は窮地に立たされていたかもしれません。破産手続きで保持が認められている自由財産も現金99万円までであり、400万円とは雲泥の差だからです。年内にすべての債権者と和解し、支払いも終わり、過払いの返金も完了しました。紆余曲折を経ましたが、結果としては破産よりも良かったのだろうと思います。
最近は、借金が理由で闇バイトや口座売買などの違法行為に手を出す若者が増えているとニュースで見聞きします。闇バイトで行う違法行為は、執行猶予のつかない重大犯罪が多く、リターンもほぼないと聞きます。任意整理、破産、再生は、そのような手段を選択せずに済む私的、法的救済手続きです。解決事例でも掲載している通り、任意整理、破産、再生を依頼される方は決して少なくありません。この記事をお読みになられている方も選択肢の一つとして各手段を考慮していただければと思います。