解決事例

2025/11/18解決事例

(解決事例)破産・管財(解離性障害)

N総合法律事務所、弁護士の首藤です。今回もご依頼者様からご了承をいただけましたので、終了した事件について掲載いたします。

 

ご依頼者様は、消費者金融や信販会社から借り入れや立替払いをしていました。債務総額は約400万円でした。

一見すると、典型的な債務整理事件ともいえます。ところが、これらの借金について、本人が借り入れした自覚がないということが大きな問題としてありました。というのも、解離性障害の症状により、別人格の他人が借り入れやクレジットカード利用をしていたので、ご依頼者様本人は、借り入れや立替払いの記憶がなかったのです。

本来であれば、破産の際にはどのような経緯で借金が増え、いつ返済不能になったかを裁判所に報告する必要があります。しかしながら、その記憶が欠落しているので、どのような目的や用途で借金をしたのかが全く分からない状況にありました。借り入れ先は消費者金融が大半を占めており、取引履歴を調べても、いつ、いくら借り入れたのかという情報しかなく、借入れの目的は明らかになりませんでした。

申立代理人(私のことです)は、ご依頼者様の味方の立場ではありますが、裏付けや根拠のない主張をそのまま裁判所や破産管財人に報告することはできません。申立代理人は、裁判所や破産管財人に対して、依頼者と同様、事件の解決に必要となれば説明・協力義務を負います。そして、債務を帳消しにする破産の申立てをする以上は、それ相応の根拠を提示しなければ、最悪、虚偽の理由により免責を得ようとしたとして、免責を受けられないことにもなりかねません。

当然ですが、医師の診断書や、診断した医師に対して照会書を送るなどして、主張の根拠の裏付けを行いました。また、前述のとおり、購入品が分かるクレジットカードの履歴をチェックするなどして、可能な限り目的や用途を推測していきました。解離性障害の影響から、ご依頼者様は就労することも当初は難しく、ご依頼者様の配偶者が中心的役割を担い、資料収集など献身的に協力していただきました。終始手続的サポートが必要であったため、上申書を裁判所に提出し、配偶者の手続への参加を認めていただきました。配偶者は管財人面談にも同席されましたし、債権者集会、免責審尋にも同席されました。

また、解離性障害の影響はご依頼者様の収入にも及んだため、破産手続開始決定時の保有財産はすべて保持させるという意気込みで自由財産拡張申立てをしました。幸い、法定自由財産である現金99万円の枠を超えてはいなかったので、拡張は全額認められました。また、免責許可相当の意見を破産管財人からいただき、免責許可、確定の流れとなりました。

いつの間にか自身が借金だらけになっている、という状況はとても気の毒だと思いましたし、何とかしてあげたいという気持ちはありました。一方で、根拠のある主張、合理性のある主張なのかを弁護士の立場から冷静に精査する意識もまた必要だと思いました。感情と理屈、どちらか一方に偏りすぎないよう努めていきたいです。

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