2025/05/20解決事例
(解決事例)破産・同時廃止
N総合法律事務所、弁護士の首藤です。今回も事件が解決いたしましたので、ご本人のご了承の下、事件をご紹介いたします。
ご依頼者様は、主に接客業を行っていましたが、精神的な不調により長期間仕事を続けることが難しい状況にありました。そのため、主に生活費のための借り入れを繰り返していました。
さらに、コロナが流行した時期が重なり、配偶者の収入が不安定になってしまったため、さらに社会福祉協議会から借り入れすることになりました。その他にも、遊興のためのPC購入などしており、ローンを組むなどしていました。債務総額は、約450万円でした。
PCについては、弁護士が受任通知を送ると、所有権留保特約に基づき、返還請求され、オークションにかけられるなどして残債務から売却代金を控除した残額が債権者から申告されてきます。この点について、PCの没収は避けたいというご依頼者様の意見もありましたが、配偶者、知人による弁済(第三者弁済)の当てもなかったので、債権者として申告しないという選択はできない以上、話し合いにより受任通知の発送及び没収に納得していただきました。破産の手続上、ここだけに返済を継続することは許されないからです(偏頗弁済)。
配偶者がいらっしゃる場合、必ずと言ってよいほどに問題になるのが、夫婦相互間の財産流出、移転行為の有無です。本来、換価、配当の対象になるべき破産者が保持できていた財産が配偶者の一方に不当に流出していないか、具体的には、破産直前に財産の譲渡や名義変更、多額の預金の移動などが行われていないかを見られます。今回もその点が問題になりそうでした。
上記の問題に対処する場合、申立書類に破産をしない一方配偶者の預金通帳や所有不動産の全部事項証明書などを添付して提出することにより、不当な財産流出がないことをあらかじめ疎明します。調査の必要があると判断されれば容赦なく管財手続になり、破産管財人が就くからです。あらかじめ疑義を挟まれないためにしっかり準備をするというイメージです。
破産者の配偶者が積極的に協力してくれたため、全ての預金口座の写しを提出していただけました。そのコピーを申立書類に添付して破産申し立てをしました。①債務総額が比較的(あくまでも比較的ですが)少ないこと、②換価対象財産がないこと、③浪費や換金などの免責不許可事由がないこと、④直近で破産財団(破産者の財産)減少を疑われるような事情がないこと。⑤申立まで長期間経過していないこと、⑥事情を説明する資料に不足がないことなどの判断要素(これは私が判断要素として勝手に考えていることです)をすべてクリアしていたため、裁判官との即日面接においても、すんなりと同時廃止になりました。裁判官からも「弁護士の説明により同時廃止の心証を得られた」との発言をいただけました。
同時廃止というのは、破産手続がはじまると同時に終了(廃止)になる手続をいいます。破産は手続が二つ同時に進行していて、財産を換価処分し債権者に配当する手続を破産手続といいます。もう一つは、借金を0にするかどうかを判断する手続である免責手続という手続があります。同時廃止になるとこの免責手続だけが残るので、免責の判断を受けるために裁判所に行くことになります。東京地裁が管轄裁判所の方の場合、目安としては申立をして3か月後に中目黒庁舎(ビジネスコート)へ行きます。そこで裁判官から審尋を受けます。これを免責審尋といいます。この手続を経て、最終的に免責許可になるかどうかの判断がなされます。
この免責審尋はどの方もすごく緊張されて時間が近づくにつれて口数が少なくなるのですが、他愛もない話をしたり、ものすごく緊張されている方とは一緒にジャンプしたりして緊張を和らげたりしています。
今回も夫婦の再出発の手助けができてよかったです。