2024/12/21解決事例
(解決事例)破産・同時廃止
N総合法律事務所、弁護士の首藤です。
今回もご了承いただきました解決事例を掲載いたします。
ご相談者様は、これまでお子さんの学費のために借り入れをしていました。その額は約400万円強でした。
これとは別に相続債務として約1000万円の借金を負ってしまいました。相続があったのは数年前で、相続放棄期間の3か月も過ぎてしまい、金融機関からも放棄していないことを確認する書面を裁判所に提出されていました。このような状況の中、相談当初は、家族の意見もあり、任意整理を希望されていました。しかし、1400万円の債務を分割払いできるほどの収入がなく、家族の協力があっても土台無理な返済計画でした。そこで、破産するよう依頼者を説得し、方針を破産に切り替えたうえで依頼を受けました。
勝負は即日面接でした。債務額が合計1400万円であり、その多額さから破産管財人がつくことが予想されました。解決事例の紹介ではよく出てきますが、東京地裁(本庁・中目黒)の場合、破産申立書を裁判所に提出した後、不備がなければ、そこから3日以内に裁判官と弁護士が面接します。提出した申立書から、換価処分すべき財産がないことや借り入れの原因が免責不許可事由に該当しないこと(もしくは該当していてもその程度が大きくないこと)をしっかりと説明できれば同時廃止になり、そうでない場合には破産管財人がつく通常管財事件になります。破産管財人がつけば予納金20万円+αの支払いが必要になってきます。これは、弁護士費用とは別であることは、これまで何度か別事例で説明してきました。
債務額の大きさから、裁判官から管財事件で処理すると言われましたが、借り入れの原因が学費で約400万円強であり、比較的(あくまでも比較的ですが…)少額であること、破産者が自身のために借入したものではないこと、1000万円も相続債務であり、本来自身の借り入れでないことを説明し、同時廃止にするよう裁判官を説得しました。そして、いったん協議するととして複数裁判官の協議を経たうえで、同時廃止にするとの結論に至りました。
この方は、本当に自分のために使いたいとか、無駄遣いをしたとか、そのような理由で借金をしたわけではなかったので、私自身も同時廃止にしたい気持ちが強かったです。その気持ちのとおりになって本当に良かったと思います。
今回のように、時には家族や依頼者の意見に反対してでも方針を変えなければならない時があります。その通りにすると、将来的に必ずしも良い結果につながらないことがあるからです。今回の場合ですと、無理して返済をしようとすれば、自分が借りたものでもない借金を含めて、最低10年以上は返済地獄に陥るからです。そして、その途中で病気になったり、定年を迎えて収入が激減したり、別の用立てでお金が必要になったりして返済がうまくいかなくなることもあるはずです。結局、最終的に返済が頓挫して破産に至るのであれば、最初から破産した方がよいです。
年内に解決できたので、穏やかに家族で翌年を迎えられることを想像すると私も仕事をしてよかったと思います。まだまだこれからも頑張っていきます。