解決事例

2024/09/10解決事例

(解決事例)破産・同時廃止

N総合法律事務所、弁護士の首藤です。今回も依頼者様から了承を得ましたので、解決事例を掲載いたします。

今回は、埼玉県の依頼者様に関する事例です。

依頼者様は、社会人になってからカードを作り、日常生活で利用していました。ごくごく普通の方です。カードの用途も当初は問題ありませんでした。ところが、カードローン枠を利用したところから返済がうまくいかなくなりました。カードローンの用途は、結婚式の費用です。一生に一度きりのことだからと、借り入れをしたことが破産に至るきっかけでした。借り入れした金額は、それ以外の分も含めて総額約600万円でした。依頼者様は、ご祝儀などを活用した返済を予定していたのですが、カードローンの利息は想像以上に大きく、完済には至りませんでした。今回の事件とは異なりますが、例えば、300万円借り入れをすると、法律上、年15パーセントの利息をつけることができるので(100万円以上の貸付の場合)、単純計算で年間60万円の利息が付くことになります。月額にすると5万円が利息でとられて元金の返済はそれ以上支払わなければならないということになります。ローン会社やクレジットカード会社は、利率を上限の15パーセント近くに設定していることが多いので、上記のとおりになることが大半です。

結婚式のための借り入れを返済するために、生活やその他の支出も圧迫され、生活が困難になり、返済や生活のためにほかの会社からまた新たに借り入れをする…。このような形で借金は増えていきます。当然新しいところからの借り入れについても、目いっぱい利息を取られることになるのです。このような状況に陥った場合には、できるだけ早期に弁護士に依頼する必要があります。中には時効をねらって借金を放置する方もいるのですが、債権回収業者(サービサー)に債権譲渡または回収委託がなされると、時効直前に支払督促や訴訟を起こされることが多いので、時効は止まってしまいます。依頼者様は、まだ訴訟などを起こされていなかった時点で、もはや自力での返済は困難だと考え、私のところにご相談にいらっしゃいました。これが功を奏しました。

破産申し立てに必要な書類を集め、協力して作成してできるだけ早期に申立てを行いました。同時廃止手続と管財手続の振り分けがよくクローズアップされますが、依頼から申立までの期間もこの振り分けの判断に影響すると私は考えています。あまりにも申立まで時間がかかると、その間の費消による財産流出、資産隠し、借入金の増大、破産による経済的更生の意欲の低さなど、免責の判断に悪影響を与える事情があるのではないかと疑問を持たれるからです。私は、どんなに遅くても、半年以内に申し立てることを心がけています。理屈では、最速で3か月程度で申立は可能だからです。

今回は、理屈では免責不許可事由の「浪費」にあたるのではないかと考えられる借り入れでした。通常は、免責不許可事由があると、免責していい人なのかどうか調査するために破産管財人が付くのですが、依頼から申立まで約4か月程度だったことや、冠婚葬祭に関する借り入れという点が考慮されたのか、同時廃止になりました。東京地裁の場合は、同時廃止になっても、免責審尋期日(破産者を免責させるかどうかの判断をする一資料として、破産者に裁判官が口頭で質問する手続)が開かれるのですが、今回のさいたま地裁の場合は、同時廃止かつ免責審尋を実施しないという完全な書面審理で免責の判断がされました。つまり、依頼者様は裁判所に行かずに破産することができたということです。

このような事件処理がされるのは、提出した書面に不備や不明確な点がないこと、申立までの期間が短期間、破産者の保有資産がないことが明確など、様々な事情が考慮されていると思います。他の記事でも触れましたが、破産手続は、管財手続が原則で同時廃止は例外ですので、全ての事件が同時廃止になるというわけではないことは、ご理解いただきたいところです。とはいえ、依頼者様も同時廃止になって安堵していたので、依頼者様の心理的、経済的負担が減る同時廃止手続にできるものはしていきたいというのが私の考えです。

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