解決事例

2024/08/07解決事例

(解決事例)破産・管財(転売業)

今回もご依頼者様から了承をいただきましたので、解決事例を掲載いたします。

 

ご依頼者様は、いわゆるせどり(転売)により自営業者として生計を立てていました。対象商品は、流行りのゲームのカードを中心としていました。

販売コストを削減するため、海外口座を通じて顧客から送金を受けたりするなどしており、決済手段もPaypalなどを採用し、やや複雑でした。

自営業者は、基本的に給与取得者の実態がない限り、売上や経費、実収入が不正確であるため、財産隠しの可能性が高いとして破産管財人が資産調査の名目で就き、管財事件になります。今回も管財事件となりました。申立て時に会計帳簿の写しを提出し、事業の実態について包み隠さず報告しました。

破産する場合、東京地裁の場合は、申立て日からさかのぼって2年分の通帳履歴を裁判所や管財人に提出します(さいたまは1年)。今回は、海外の口座も保有していたため、その口座画面をプリントアウトしたものやスクリーンショット、写真などを提出しました。口座を多く保有している方はここが手間になります。一括記帳部分がある場合には、銀行の窓口でその部分を取得することも必要になるので、依頼を受けた場合、通帳履歴を早い段階で提出するよう私は求めています。話がずれましたが、口座間送金を頻繁に行っている場合、どの銀行からどの銀行へ送金したのかを事前に明らかにすることが望ましく、通帳履歴とにらめっこする作業をすることになり、膨大な量になればそれなりの負担になります。この作業を飛ばすと、申告されていない口座に送金履歴があることなどが後に発覚して、管財人から資産隠しの疑いがあるとして追及されることもあり得ます(今回はそのようなことはありませんでした)。

カードの在庫はなかったため、管財人に換価処分されることはなかったのですが、唯一、海外の顧客に需要のある雑誌、カタログにプレミア値がついていたので換価対象となりました。破産する場合、お金に換えられそうな破産者の財産は破産管財人が売却して換価し、管財人報酬の一部に充てたり、債権者の配当に回します。この換価処分に時間がかかると、破産の手続きが終わらず、複数回裁判所へ行くことになります。今回は1回で済みました。

依頼後、途中で、家賃を数日支払期限を過ぎて支払ってしまったというアクシデントが起こり、偏波弁済(特定の債権者に不当に返済した)ではないかと管財人から追及を受けました。しかし、その支払いが遅れたのは、親族が破産申立て準備中に亡くなり、葬儀の準備で支払いどころではなかったこと、そもそも実際の出捐者が破産者ではないことを説明し、納得を得られました。ここは細かいのですが、ライフライン(家賃、電気、ガス、水道、電話、インターネット)に関する支払いは、生きていくために必要な支払いとして、本来債権者に支払いをしてはいけないという破産のルールの例外に位置づけられています。しかし、それはあくまでも毎月の期限内に支払いをした場合の話であり、滞納した場合には話は変わります。上記の追及を受けたのはそのことが理由です。こういった点についても追及を受けるので、気は抜けません。

ご依頼者様が正直にすべてを申告してくれたので、最終的には免責されましたが、海外口座、複数口座の保有、自営業者、この辺りの事情は、事件処理にあたって何が飛び出してくるかわからないので、ハラハラしながら慎重に資料に目を通しています。

 

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