2023/12/12解決事例
(解決事例)破産・管財
N総合法律事務所、弁護士の首藤です。
今回も破産の解決事例について、掲載の許可をいただきましたので記載いたします。
今回の依頼者様は、弊所に依頼されるまでの間に2つの法律事務所で債務整理の依頼をしていました。しかし、いずれも手続が頓挫してしてしまい、法律事務所から辞任されてしまいました。このままではいけないと考え、今度こそしっかりやり遂げるという決意の下、弊所へ依頼されました。
依頼の時点で問題がひとつありました。それは、婚約者との交際関係です。依頼者様はこれまで金銭管理をきちんとしていなかったところがあったため、婚約者の方が良かれと思って依頼者様の金銭管理を行っていました。収入の中から一定の金額を婚約者の口座に送金させ、そこから結婚のための費用を貯め、かつ、依頼者様の支出に応じて預金を引き出して交付するという堅実な管理方法でした。一見すれば、この行為は交際関係にある男女間にはよくある行為であり、問題がないかのように思えます。ところが、破産との関係では、この行為が財産隠匿・散逸行為として問題になってしまったのです。比較的交際期間が長かったため、送金させていた金額が多額になっており、本来債権者に返済すべき収入を隠匿・散逸させているとして破産管財人が就く管財事件になりました。
破産管財人との面談の際、これまでに送金した金額全額を婚約者に請求するという主旨の発言がありました。破産管財人は、破産者の財産の管理処分権を持ち、一度相手が受領した金銭を取り戻したり、破産者が行使できる未回収の債権を取り立てたり、財産隠匿が疑われる契約を取り消す、破産者に代わり損害賠償請求権を行使するなどの権利があります。今回の送金行為も返還請求の対象になったということです。しかしながら、それまでの累積金額を婚約者に返還させることは難しく、また、返還させた場合、依頼者様と婚約者の関係に悪影響を及ぼすことは避けられないため、何としてでも返還額を減額する必要がありました。
そこで、依頼者や婚約者と協力し、婚約者の通帳履歴や日常生活における共同生活の支出の履歴、カード決済履歴に至るまで、すべてを開示し、依頼者との生活のために支出がなされており、婚約者が依頼者様に送金させた金額を現在もなお保持しているわけではないということを詳細に説明しました。その結果、返還すべきとされた金額は、総額の4分の1以下になり、婚約者の資産が全てなくなってしまう事態や依頼者様との関係が悪化するという事態は何とか避けることができました。最終的には、破産管財人から、免責不許可事由(浪費)はあるけれども、裁判所の裁量により免責することが相当であるとの意見をいただき、無事、免責となりました。
上記のとおり、日常的にはよくある行為でも法的には問題のある行為というものがあります。東京地裁に破産を申し立てる場合、最近、SNSでも話題になりましたが、とにかく審査が厳しいです。今回のように、通帳の履歴から長期間の送金行為が発覚すれば、まず、同時廃止(破産管財人が就かない手続)にはなりません。他の法律事務所においては、管財事件になり予納金(最低20万円)が払えず、破産を断念するというケースもあるようです。弊所では、今のところそのような事件の経験はありませんが、経済的に困窮されている方が依頼者には多いため、今後、そのような事態が生じる可能性はあります。この記事をご覧になっている方々には、財産移転行為は事後的に問題になるので、慎重に検討すべきことをお伝えしたいです。
今回は、私自身の感想として、交際相手が積極的に協力してくれるというのは本当にありがたいことだなと思いました。協力を拒まれてしまっていたら、間違いなくもっと悪い結果になっていたからです。それとともに、私は、異性には好かれることがないので、なんだかうらやましいなとも思いました(?)。