2025/08/07解決事例
(解決事例)破産・管財(個人事業主の場合)
N総合法律事務所、弁護士の首藤です。ご依頼者様からご了承いただきましたので今回も解決事例を掲載いたします。
ご依頼者様は、自身が借り入れをしたというよりも、周囲の状況から借り入れをせざるを得ない状況にありました。
配偶者が稼働できず、その医療費の負担が大きかったことや、職場環境に恵まれず、転職を繰り返していたことで生活費がかさんだことが借り入れの理由でした。
元々貯蓄もあったものの、上記の生活により底をつき、借り入れをするようになった経緯がありました。債務総額は、約900万円でした。
返済期間が長く、理由が理由でしたから同時廃止も考えられましたが、依頼当時は個人事業主であったため、原則として管財事件になる運用を裁判所は取っていることもあり、借入金の大きさと合わせて、管財事件として申立てしました。個人事業主は、給与取得者と異なり、収支が恣意的に調整されるおそれがあり、財産隠匿や虚偽申告の可能性があるため、このような運用になっていると理解しています。私の過去の経験には、給与取得者と実質変わらないことを疎明することで同時廃止とされたケースもありましたが、給与取得者といえない程度に収入にばらつきがあること、後述の相続問題、債務総額が大きいなどの個々の要素に鑑み、管財事件での申立てとしました。
問題になったのは、遺産分割と個人事業の収益関係でした。前者は、遺産分割協議で特定の相続人に遺産分割が偏っているとして、その特定の相続人へ追及がなされる可能性がありました。この点については、当該特定の相続人から、ご依頼者様がその偏りを甘受できるほどに経済的援助を受けていたことを当該特定の相続人の通帳履歴を提示するなどして疎明し、事なきを得ました。また、個人事業の収益については、未領収の還付金についても破産財団組み入れの対象とされ、資料の提出も求められましたが、還付金がないことを直近の確定申告書を提出したり、過去数年分の請求書を提出して疎明し、組み入れ対象財産がないことを破産管財人に説明することでクリアしました。
引継予納金は20万円で済み、問題なく免責許可を受けた後、確定しました。事件は無事に終了しました。
今回の事件の感想としましては、やはり、長期間の借入と返済の繰り返しは、精神的にも大きな負担となるということです。ご依頼者の方が明るい性格であったため、ここまで持ちこたえていましたが、普通はここまで耐えられません。最悪、精神疾患を発症してしまうこともあります。返済が難しいと思ったら、即専門家へのご相談をおすすめいたします。